fateキャラで送る金融工学講座

スワップとアレンジャー

 


 さて、今回は前に教えたスワップを応用して、どんな取引が行われているかを話すわよ。

 スワップっていうのは交換だったよな。前回はお互いの利益を交換することで安定した収入が得られるという話だったな。

 そう。だけど、スワップと呼ばれているものはそれだけじゃないのよ。

 それだけじゃない?

 ええ、スワップというのは利益と利益だけの交換に限られたものではないってことよ。たとえば物と物、お金とお金の交換もスワップと呼ぶの。

 物と物?

 そうね・・・じゃあ衛宮君に、ちょっとした問題を出すわ。ある所に大判焼きをつくるお店が二つあったの。そして、その二つのお店は、そこそこ離れている場所にあって、お互いお客さんがブッキングする恐れも無い。

 ふむふむ。(大判焼きと聞いて話に参加してきた)

 そして彼らのうち、お店のひとつは知り合いに農家がいて、大判焼きの生地の材料になる小麦粉が安い値段で手に入るの。そして、もうひとつのお店は違う農家から大判焼きの中に入れる餡子の材料になる小豆を安く手に入れることができる。

 さて、ここからが問題よ。この二つのお店が、お互いに、より安い価格で大判焼きをつくるにはどうすれば良いと思う?

 

 

ふたつのお店は、どちらも安価に材料を仕入れるルートを持っている。

でも、安く手に入る材料はそれぞれ違う。

 

 簡単なことです。ふたつの店で協力し、スワップすれば良いのです小麦が安く入る店は小麦を、小豆が安く入る店は小豆を、それぞれ余分に入荷し、お互いそれらの品を交換すれば良いのです。そうすれば、彼らはより安価に大判焼きをつくることができます。

 さすがだな、セイバーは。やはり王様をやっていただけある。

 いえ、安くて美味しい大判焼きができることは、私の夢ですので。当然の結論を出したまでです。(きっぱり)

 ・・・とにかく、今、セイバーが説明したように、お互いの利点を交換して、自分たちの利益に繋げるのもスワップのひとつの方法なの。そこは理解して貰えたかしら?

 

お互いの利点を生かし、スワップすれば利益に繋がる。

 

 

 なるほど。それに、これは誰もが喜ぶ取引だな。スワップにはこんな利点もあるんだな。

 そうね。そして、こうした取引の紹介や仲裁をするのがアレンジャーと呼ばれる人たちなの。ちなみにアレンジャーの先駆者として有名な人に日本の坂本竜馬がいるわ。

 

アレンジャーの先駆者・坂本竜馬

 

 

 坂本竜馬って、幕末の志士の坂本竜馬か?

 ええ、彼は日本の商社と海軍の原型をつくった人ですもの。ある意味、当然といえば当然と言えるわ。また彼の行った商取引は、その後の世界史にも大きな影響を与えたの。その様子を描いた再現映像を用意したから、それを見て頂戴。

 

 

 

再現映像  幕末・日本

 

 

この時代、日本は激動の時代を迎えていた。ペリーの来航によって不平等条約を結ばされ、条約を結んだ幕府に対して各地で反発が強まっていた。そんな中、幕府に対抗できる勢力を持っていたのが薩摩長州である。しかし、この両者はお互いにいがみ合っていた。

 

長州

 禁門の変で薩摩が裏切ったこと・・・忘れていませんわ!

薩摩

 ・・・京都で多くの同胞を殺した長州は許せません!

 

そうしている間に、幕府は第二次長州征伐を決定。長州は滅亡の危機に晒された。

「このままでは幕府を倒し、日本を改革する勢力は無くなってしまう!」

そう考えた坂本竜馬は、次のような取引を両者に持ちかけた。

 

坂本竜馬

 このままでは長州は滅ぼされてしまうだろう。ならば、いっそのこと薩摩と同盟したらどうだ?

 はあ? ふざけないで下さい! あのイギリスと組んでいるような薩摩と手を握れですって? 冗談も大概にして下さい!!

 でも、このままでいたら本当に長州は滅ぶぞ? なにしろ前の戦いで武器のほとんどを失っているんだからな。

 大丈夫です。根性があれば勝てます! ええ、武器なんて無くても・・・

 お前、意地なんて張っている場合か? とにかく俺に任せてくれ。悪いようにはしない。

 

そして竜馬は薩摩に向かった。薩摩も同じように長州を憎んでいた。

 

 長州と同盟しろですって?! ふざけないで下さい!! FACK YOU!!

 だけど、長州が滅亡すれば、次に幕府に狙われるのは貴女たちですけど?

 そんなこと関係ありません! とにかく長州と手を結ぶだなんて、ナッシング!ナンセンス!絶対無理!!

 でも最近、薩摩は飢饉が続いて米が不足しているでしょう?

 う・・・うぐ! そ、それがどうしたと言うのです?

 いくら武器を沢山持っていたって、食糧となる米がなければ幕府とは戦えない。幕府に経済封鎖でもされたら、降伏するしかなくなりますからね。

 だ、だから・・・それがどうしたと言うのです?! 食糧が無くても根性で戦えば・・・

 逆に長州には米が余っているんです。どうでしょう? ここは長州の米と薩摩の武器を交換してみては?

 なんですってええええ?!

 

 

 


 

 こうして結ばれたのが薩長同盟。坂本竜馬の行った取引は、コメスワップと呼ばれ、現在でも応用されている手段だわ。そして、竜馬のとった行動によって憎みあっていた薩摩と長州は手を結び、明治維新への第一歩を踏み込むことができたの。

 なるほど、米が無くて武器がある薩摩と、武器が無くて米がある長州のお互い利点と欠点をスワップしたわけだな?

 

薩摩は武器を長州に送り、長州は薩摩に米を送る。

これがきっかけで1866年、薩長同盟は締結される。

 

 お互いの利点と欠点を補い合うわけですね。まるでシロウと私のような関係です。シロウが私に食糧を供給する。私がシロウの剣になる。シロウが私に美味しい料理を作る。私がシロウを守る・・・

 いや、それだと聖杯戦争でも起こらない限り、スワップと呼ばない気もするが・・・

 ちなみに坂本竜馬のようなアレンジャーの役割は、その後、銀行や証券会社が担うようになってきたの。顧客同士のニーズに合わせ、オーダーメイドに交換することができる――それが銀行や証券会社で行われていたスワップ取引ね。ただ、パソコンやインターネットの普及と共に、こうした取引は変化が見られるようになったわ。

 

 

従来までのスワップ取引

ひとつの銀行が仲介し、スワップが行える顧客を探し出す。

 

 

 

現在のスワップ取引

複数の銀行が連携し合い、条件があう顧客を素早く探し出す。

これはパソコンの普及によってインターバンク市場が生まれたことにより可能になった。

 

 つまり、今は坂本竜馬の時代よりも、よりスワップがし易い時代になったんだな?

 その通り。そして、より複雑でより多数の取引が行われるようになった今、金融工学は現代人にとって必要不可欠な学問と呼べるわ。だから衛宮君も頑張って勉強について来てね。

 あ、ああ・・・

 それはそうとシロウ。そろそろ三時のおやつの時間です。勉強はこのぐらいにしておいて、おやつにしましょう。

 では今日の授業はこの辺で。次回は金融工学でリスクコントロールと並ぶ、もうひとつの柱、デリバティブについて説明するわ。

 

 

参考資料

はじめての金融工学 真壁昭夫・著  ファイナンス理論の新展開 久保田幸長・著

 

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