inserted by FC2 system
偉大な先人に学ぼう

その1 投資の神様 ウォーレン・バフェット


 よし! ネット口座の作り方もわかったことだし、さっそく株を始めるぞ!

 ちょっと待って下さい、耕一さん! 株を始めるにしても、どの株を買えばいいのかが解らなければ、何の意味もありません。

 う、うぐっ…! そ、そうか…

 そうだよ、お兄ちゃん。株を売ったり買ったりする注文を出すことは、誰にでも出来ることだけど、実際その株で儲けるというのは、とても大変なことなんだよ。

 そうか…その通りだよな。でも株で稼ぐには、本当どうしたら良いんだ?

 私は株で実際に利益をあげている人たちに教わるといいと思うな。

 実際に利益をあげている人たちに教わる?

 うん。お兄ちゃんだって料理が上手くなりたいって思ったら、料理の上手な人に教わったりするでしょう? 初音は株のことを知りたいんだったら、株を扱うのが上手い人に教わるのが一番だと思うの。

 ………。

 ……なかなか良いこと言いますね。初音。

 そ、そう…?

 ああ、感心したぞ。初音ちゃん。

 えへへ…



【株で世界第二位の富を築いたウォーレン・バフェット】



 じゃあ、最初に紹介するのは、株で世界第二位の財産を築いた人、ウォーレン・バフェットだよ。

 ウォーレン・バフェットは、1930年アメリカのオマハに生まれた方です。莫大な財産を株で築いた彼は、投資の神様という渾名まで持っています。


【ウォーレン・バフェットの略歴】

1930年 アメリカ・ネブラスカ州オマハで、アメリカ上院議員ハワード・バフェットの息子として生まれる。
1947年 ウッドロー・ウィルソン高校卒業
1949年 ペンシルバニア大学ウォートン校ファイナンス学科卒業
1950年 ネブラスカ大学経済学士取得
1951年 コロンビア大学経済学修士取得

1951年-1954年 バフェットーフォルクカンパニー(父の会社)で投資セールスマンとして働く。
1954年-1956年 グレアム-ニューマンカンパニーで証券アナリストとして働く。
1956年 バフェット・パートナーシップ設立
1970年 バークシャー・ハサウェイーオマハー会長に就任


 うおお。す、凄い経歴だな…

 はい。アメリカでも名門と呼ばれているペンシルバニア大学とコロンビア大学を卒業しています。よほど頭の良い人みたいですね。

 そんな頭がいい奴がする株式投資なんて、さぞかし複雑な計算式を使うに違いない…

 それがそうでもないみたいだよ。バフェットが考え出した投資手法は、株を割安の時に買っておいて長期に渡って保有する方法なんだって。

 株を割安の時に買っておいて、長期に渡って保有する…?

 はい。バフェットの投資方法は、デイトレードなど短期売買を行う人たちから見れば、驚くほど長期に渡って株を保有するというものです。1年や2年、場合によっては数十年も同じ株を保有するということが珍しくありません。

 数十年も同じ株を持つ…。それはそれで凄いな…。

 だけど、バフェットの方法が正しかったってことは、彼が今までしてきた取引で証明されているよ。なんたって彼はそうして、世界第二位の財産を築いたんだから。

 彼が株を長期保有するようになったのは、彼の幼い頃の体験によるものだと言われています。11歳の時、バフェットは初めてシティサービス株を、1株当たり38$で購入します。しかし購入後、株価は急落。38$だった株価は27$にまで下がります。しかしその後、株価は回復。安心したバフェットは1株当たり40$になった所で、株を売却しました。

 …損はしなかったんだ?

 はい。でも、バフェットが株を売却した後も株価は順調に伸び続け、翌年にはシティーサービス株は一株当たり200$にまで上昇します。このことからバフェットは、優良株は長期保有が鉄則、という哲学を身につけたと言います。

 ちなみにバフェットには従妹がいて、バフェットは幼い彼女にバースデープレゼントとして、シティサービスの株を何株かあげちゃったのよね。だけど従妹は、それが何なのかわからなかったから、ずっと持っていたため、数年後には株を売ったバフェットよりも、ずっと大金持ちになっていたの。

 …なんか身につまされるような話だ。

 でも、そういう体験をしてバフェットは、株は長期保有すべきだという結論に達したんです。実際、彼は株を長期保有することにより、通常に売買するよりも何十倍もの利益を生み出しています。




【株の長期保有は本当に有効なのか?】


 では、ここで具体的な話に入りましょう。本当に株の長期保有は有効なのか? これを検証してみようと思います。

 そ、そうだよ! それが一番重要だよ! 株って長く持てば儲かるのかい?

 まず、バフェットの考え方では企業には二種類の企業があるとされています。それが「コモディティ型」の企業と「消費者独占型」の企業です。

 コモディティ型と消費者独占型?

 コモディティというのは、日用品のことだね。そんなコモディティ型の会社は、他の会社と似たようなサービスしか消費者に提供できないの。だから、どの会社で買っても同じなら、消費者が一番目にするのは、価格だよね?

 あ、ああ…

 しかし価格を下げて競争してしまえば、企業そのものの収入は低くなることになります。購買価格が安ければ、儲けも少ないのですから当然ですね。バフェットは、こういった会社の株の長期保有は避けるべきだ、と言っています。


《バフェットが長期保有を避けるべきだとする会社》
航空会社、穀物生産業、紙業、石油会社、天然ガス採掘業




 なるほど、日本でもJALが安売りしすぎて航空産業全体が落ち込んだりしているしな。

 もちろん、国全体が高度経済成長に沸き立ち、全般的に株価が上昇し続けているならば、こうした株を長期保有するのも良いでしょう。しかし、安定期に入った先進国では、これらの業種の株は買ったものの経営不振などで株価が下がる可能性があります。

 だからバフェットは、コモディティ型の企業よりも消費者独占型の会社に投資しなさいって言っているの。ちなみに消費者独占型というのは、書いてある字の通り、消費者を独占する会社って意味なの。

 消費者を独占する会社? 例えば、どんな会社だろう?

 バフェットがこれまで買ってきた会社の株は、コカ・コーラ、ディズニー、ジレット、アメリカン・エキスプレスなどがあります。これらの会社はアメリカでは間違いなく消費者独占型企業で、バフェットが長期保有するには、まさにうってつけの会社だったと言えます。



↑大人でも子供でも楽しめるディズニーランド
これは完全な消費者独占型企業


 なるほど! そういえばコカ・コーラも作り方を知っている人は世界で三人しかいなくて、売られているコーラは彼らが作った原液を薄めているって話を聞いたことがあるな!


※ またバフェットは消費者独占型企業を通行料を取る橋に例えている。川があって、橋がひとつしか無い場合、川を渡るためにはその橋を通るしかない。橋の所有者は自由に通行料を設定できる。そして利益を独り占めにできる。



【株を購入するタイミング】


 よし、わかった! 要は消費者独占型企業であるコカ・コーラの株を、すぐに沢山買えばいいんだな?!

 ちょ、ちょっと待って下さい、耕一さん! タイミングを計らずに、株を購入しても何も良いことなんてありません!

 タイミングを計る…?

 そうだよ、お兄ちゃん。株は安い時に買って、高い時に売る。これが鉄則だよね? だけど、今あわてて買った株が、実は割高の値段だったりしたら後で損することになるよね?

 ううん…た、確かにその通りだ。

 株には買い時と売り時があります。それを見計らうのも、株で利益をあげるための重要なポイントです。実際、ウォーレン・バフェットも「1000円の商品を500円で買うように株を買え」と言っています。

 でも、言いたいことは判るんだけど…株の買い時って、どんな時なんだ? 素人の俺にはさっぱりなんだけど。

 一般的な物差しとして、その株が割安か割高かを調べるのに、PERという指標があります。

 PER?

 企業の収益力に対して、現在の株価がどれぐらいの割合なのかを計算した数値です。計算の仕方はいたって簡単で、株価を1株益(1株当たりの利益)で割って求めます。


PERの基本公式
株価÷1株益(1株当たりの利益)


 こうして割り出された割合をPERと呼びます。一般にPERは、低ければ低いほど、その株は割安であるとされています。

 じゃあ、PERをマスターするために、下の練習問題を解いてみよう。


《練習問題》

A社は1株当たり、1年で100円稼ぎます。そのA社の株価は1000円です。
B社は1株当たり、1年で150円稼ぎます。そのB社の株価は2000円です。
さて、A社とB社、どちらの株が割安でしょうか?



答え(※ 答えは反転してあります)

A社の場合
1000円÷100円=10

B社の場合
2000円÷150円=13.3

よってA社のほうがB社よりもPERは低い。つまり、A社の株のほうがB社の株よりも割安である。



 なるほど! つまり、そのPERがなるべく低い会社を探し出せば良いんだな?

 そうです。でも、このPERの倍率は業種ごとによっても異なりますし、また絶対に正しい値とは言い切れません。会社の財務諸表などにも目を通して、その会社が真っ当な商売で利益をあげているのかどうかも確認する必要があります。

 大切なお金を預けるんだから、二重三重のチェックは必要だね♪

 あと、耕一さん。株を購入するタイミングを知るために、ちょっとした質問をしますがいいですか?

 ちょっとした質問?

 はい。例えば耕一さん、ここに二種類の株が存在したとします。一方は現在、株価が元気よく値上がりしている株。もう一方は、会社の上層部が不祥事を起こして下落している株です。どちらも会社としては、バフェットの言う消費者独占型だとします。バフェットはどちらの株を購入すべきだと言ったかわかりますか?

 そりゃあ…元気良く値上がりしているほうじゃないのか? 株価が上昇してきているってことは、会社の人気が上がってきているってことだろう? それに上層部が不祥事起こして、下落してきている株なんてなあ…

 ………。

 ブッブーッ! お兄ちゃん、大外れ!

 え、ええ?!

 バフェットはね、会社が不祥事を起こして、株価が下がった時こそ株を買うチャンスと言っているの。それでバフェット自身も会社が不祥事を起こした時に株を買って、大儲けしているんだよ。

 そ、そうなの?!

 はい。バフェットは1988年の「第二のコカ・コーラの失敗」という事件の時、コカ・コーラ株を大量に買い込みました。当時、コカ・コーラは株価が大暴落。バフェットが購入した株も下落しましたが、徐々に値上がりし始め、バフェットは数年で元手の数倍ものお金を手にすることになりました。

 それは凄いな…

 でもね、バフェットはコカ・コーラは絶対に潰れないっていう企業価値を確信していたから投資したんだよ。だから、その企業は消費者独占型の会社かそうでないかの見極めはホント重要なの。

 投資する会社に企業価値があるのか無いのかを判断するためには、簿記の知識もある程度必要になります。たとえば決算ごとに出されている財務諸表で、営業収入(本来の業務による収入)よりも営業外収入(持ち株や土地などの資産を売って稼いだ収入)で儲かっている会社は、なるべく敬遠したほうが良いでしょうね。同じ収益でも、そのお金はどうやって稼いだか?を調べることは、とても大切なことだと思います。この点もバフェットは注意しています。

 ようするに、株式投資をするなら会社をちゃんと見ろってことだな。







次へ



トップへ
















オマケ de コラム

ウォーレン・バフェットの投資スタンスは、会社を丸ごと買おうというもの。
そのため、株を買った会社と一緒に責任を取るということまでやっています。

有名なのは1991年、ソロモンブラザーズ銀行の不祥事の時のこと。

ソロモンブラザーズは当時、アメリカ最大手の投資銀行でした。
もともとバフェットは投資銀行というのが好きではなく、彼らの株を購入することも望んでいませんでした。
でも、彼の持ち株会社を助けて貰ったお礼にと株を購入したのです。

しかし、これが大失敗!

当時、ソロモンブラザーズ社は儲けが出れば何をやっても良いという社風がありました。
そして、会社内では不正が当たり前のように横行していました。

そんな1991年、ついに不正が連銀にバレ、ソロモンブラザーズ社は世間から糾弾されます。
会長のグッドフレンド氏は辞任。
筆頭株主だったバフェットに急遽会長になって欲しいと社員たちから依頼が来ます。
友人知人たちは一斉にバフェットの会長就任に反対しました。
「馬鹿なことをするんじゃない! そんなことしたら君もソロモンと一緒に犯罪者扱いされるぞ!」

でもバフェットは引き受けます。

バフェットは「株主と社員はパートナーである」という信念を持っていたのです。
彼は社員のため、自分は何も悪いことをしていないのに世間に頭を下げ続けました。
そして、その年の六月、ついに世間はソロモンブラザーズを許しました。
政府はソロモンブラザーズへの訴訟を取り下げ、事件は不正を行った社員だけが解雇されることで解決します。
バフェットは事件が解決すると、即座に会長を辞任しました。

そして、今までの仕事の報酬として1ドル札を一枚だけを受け取って、会長室から立ち去ったそうです。

株を持つということは、企業を信用し、その企業の共同経営者になるということ。
バフェットはそう言ってますが、私たちには、ちょっと真似のできないことですね(^ ^;