月姫キャラで送る経済講座@
為替相場とマネー経済
全国一億五千万人のenjoyユーザーの皆さん、こんにちは。今回から何回かに分けて「月姫キャラで送る経済講座」をお送りします。
一億五千万って……そんなにenjoyの使用者っていたか?
嫌ですねえ、志貴様。ノリです。ノリ。Jokeを真面目に受け止めてはいけません。
琥珀。無駄口はそれぐらいにしなさい。只でさえenjoyは画像容量の少ない掲示板なんですから、ノリや突っ込みだけで容量を消費するわけにはいきません。(※本作品は、enjoy koreaの翻訳掲示板で連載されていました)
おっと、これは失礼を。では、さっそく本題を話させていただきます。当コーナーは、皆さんに近代の経済史をわかりやすく教えることを目的で作られています。
近代の経済は複雑化しています。しかし、お金のことや経済の知識は日々重要になっています。
だから、よりわかり易く、多くの人に経済のことを知って貰おうというのが当企画です。だからあまり肩肘は張らずに聞いてくださいね。
あ、ああ…
では、さっそく本題に入ります。今回は為替相場とマネー経済についてお話します。
為替相場?
ええ。志貴様も一度はテレビのニュースとかで、1ドルが何WONとか1円が何WONとかいう話を聞いたと思います。
ああ、円高とか円安とかだろう?
ちなみに円の価値が上昇するのが円高。円の価値が下降するのが円安。わかり易いように、下に書いておきましたので見ておいて下さい。
1. 円高→円の価値があがる。
2. 円安→円の価値が下がる。
3. WON高→WONの価値があがる。
4. WON安→WONの価値が下がる。
あと世界ではアメリカのドルが基軸通貨として使われているので、円高やWON高はドル安とも言い換えることが出来ます。(英語ではKey Currency)
基軸通貨?
各国が海外への支払いに備えて持っている通貨や、貿易の受け取りなどに使われる通貨のことを基軸通貨と呼びます。そして、第二次世界大戦が終わった直後、アメリカは圧倒的な経済力を誇っていたので、アメリカのドルは世界的に信用がある通貨だったんです。そのため貿易で支払いに使われる通貨は、ほとんどドルです。アラブから石油を買う時にも支払いはドルで行われます。事実上、アメリカのドルは世界の基軸通貨と見なしても良いでしょう。
ドルは世界の商取引で幅広く使われる基軸通貨。
ほとんど輸出入の支払いは、ドルで行われる。
ああ。だからニュースとかでは1ドルが何円、1ドルが何WONとかで報道されるんだな?
その通りです。でも、最近はヨーロッパ諸国が経済統合を行い、ユーロ(€)が誕生したためにユーロが第二の基軸通貨として扱われることが多いですけどね。そして、この為替相場の交換比率は刻々と変化します。円が欲しい人が増えれば円高、ドルが欲しいという人が増えればドル高。これは毎分毎秒、リアルタイムで行われています。
でも、面倒じゃないか? 刻々と価値が変化するなんて、通貨を交換する側にしてみれば、すごく面倒なことだ。
兄さんの考えはもっともです。昔は兄さんの考えるような人が多かったので、為替相場は固定相場制を採用していました。
固定相場制?
固定相場制とは、1ドルが300円だったら1ドル300円とずっと変わらないまま交換させるという制度ですね。ちなみに日本は1973年までこの固定相場制でした。
それが、何で今みたいに変わっちゃったんだ?
簡単に言うと、固定相場制には弱点があったからです。それまでアメリカ政府はドルの価値を固定するために金本位制を採用していました。
金本位制(英語ではGold
standard)とは、●ドル持っていれば●グラムの金と交換するという決まりのことです。金という金属は、世界的に価値が高くて、世界共通のお金という側面があったからです。そこでアメリカ政府は、金1オンスにつき35ドルで交換する、という制度を採用していたんです。(1オンス=約31g)
↑世界共通の通貨・金と100ドル札
なるほど。つまり、ドルを金と結びつけることで、他の国の人たちに安心感を与えてドルの価値を固定していたわけなんだな。
はい、ですがここには思わぬ落とし穴が潜んでいたのです。
金本位制は政府が自国の通貨を絶対に金に両替してくれるという前提の元に成り立ちます。しかし、政府が所有する金よりも発行した通貨の方が多かったらどうなりますか?
………怒るだろうな。あと、政府が発行した通貨を信用しなくなるかも…?
そうですね。そして、そういった事態は本当に起こってしまったんです。1971年のニクソンショックがまさにそれです。
ドルの金本位制をやめると宣言したニクソン大統領
当時、アメリカはベトナム戦争などによる赤字に悩まされていました。その赤字を穴埋めするためにアメリカ政府は、ドル札を大量に発行したため、市場には大量のドルが出回るようになったんです。ですがこのドルを全部を金に交換することは、もう無理だとアメリカは判断したんです。そして、アメリカはドルの金本位制をやめると宣言しました。
もっとも、このニクソンショックについては現在でも様々な見方で議論がされています。急速に経済成長をした日本に対する貿易赤字問題を解消するつもりだったとか、新興国に対する牽制とかとも言われています。ただ、金本位制を止めてしまったドルへの信用の失墜は凄まじく、1971年8月1ドル360円だったドルは、12月には308円にまで下落しました。
ニクソンショック後のドル相場
凄いな…。今は当時の半分以下にまでドルの価値が下がったんだ。
まあ、金本位制は、貨幣の価値を維持するために政府が貨幣価値を裏打ちするための金を得なければいけないという面もあったんです。そのためにアメリカ政府は常に赤字に悩まされていました。アメリカの財政再建を公約に大統領選に立候補したニクソンにしてみれば、当然の帰納だったと思います。
そして、世界の主要国は「こんなにドルの価格が下がるんだったら、とても今の固定相場制でやっていけない!」と見切りをつけ、次々に変動為替相場に変えていきました。
ちなみに日本は1973年2月、世界に先駆けて固定相場制を止めることを宣言しました。なぜならアメリカが勝手にドルの価値を下げたのに、日本がドルの価値を固定するために自腹を切るのは馬鹿馬鹿しい話ですから。(※ 固定相場では、下がったドルの価値を維持させるために、政府がドルを買い占めたりしなければならなかった) 続いてヨーロッパ諸国が変動為替相場を導入。1973年3月までには、世界のほとんどの主要国が変動為替相場を導入しました。
なるほど。こうして今のような為替相場になったんだな。
ええ、ただ世界が固定相場から変動相場に移り変わった結果、世界の経済は実物経済からマネー経済へと移行していったんです。
マネー経済?
マネー経済とはお金を払って物を買ったり、サービスを受けることではなく、お金そのものを増やすためにお金を交換したり、株を売り買いする経済…いわばお金自体を商品と見なして取引することを言います。
これまでの経済(実物経済)では、お金は物を買ったりサービスを得たりするためのもの。
しかしマネー経済においては、お金を増やすために、お金が使われる。
お金そのものが商品になる、か…。貯金ばかりしていた俺には、あまりしっくり来ないな。でも、それって良いことなのか?
一概に良い悪いとは言い切れませんね。ただ、現在の取引は全体の9割がマネー経済によるものです。貿易などによるお金の流れ(実物経済)は、全体のほんの一割にしか過ぎません。
そ、そんなに凄いのか?!
ええ。だから現代に生きる私たちは、マネー経済に関する知識を少なからず得る必要があります。兄さんにも、しっかり勉強して貰います。
では、今回の講義はこの辺で終りにしましょう。次回はマネー経済が実際、どのように動いているのかを御説明しましょう。
参考資料
経済のニュースがよくわかる本 世界経済編 細野真宏・著 金融マーケティングハンドブック 住友信託銀行・著 Long-Term Secrets to Short-Term Trading Larry R. Williams ・著