月姫キャラで送る経済講座C
ジョージ・ソロス(前編)
こんにちは、皆様。今日も月姫キャラで送る経済講座の時間がやって参りました。今回は作者が某翻訳掲示板でID停止を食らってしまったため、掲載が遅くなりました。
ID停止って…何やらかしたんだ?
ええと、中国国境で起きた事件の記事を某掲示板で掲載したらこうなりました。中国の問題は今は国民感情とかもあるんで、ヤヴァイそうです。
・・・・・・・・・・・・・・。
まあ、少しBLACKなユーモアも入れた事は確かですが。それぐらいでID停止なんて悲しいと作者は思っています。
(その少しBLACKなユーモアが悪いと思う・・・)
琥珀。前も言いましたが、無駄口はそれぐらいにしなさい。enjoyは只でさえ容量が少ないのですから…
はい。申し訳ありません、秋葉様。では話を本題に移します。今回はヘッジファンドの教祖と呼ばれる男「ジョージ・ソロス」についてお話します。
ヘッジファンドの…教祖?
ええ、ソロスは世界的にも有名なヘッジファンドのトレーダーなため、世界経済に関する影響力は凄まじいものがあります。彼の発言ひとつで一国の経済すら揺るがすことも出来るでしょう。それだけの力を持った彼を教祖を崇める人たちもいるということです。
↑ジョージ・ソロス
ちなみにソロスを一躍有名にしたのは、前回お伝えしたポンド危機の際です。彼は当時の大暴落で空売りを仕掛け巨額の富を手に入れました。そのため各国の首脳から非常に恐れられる存在になったんです。現在もアメリカ政府は、彼が不用意な発言をしないように厳重な警戒をしているようです。
凄いな、それは…。アメリカすらも恐れさせる男か…。
ええ。ある意味アメリカ大統領は、オサマ・ビンラディンとか言う人より、彼の方が脅威と感じているかもしれませんね。彼はユダヤ系ハンガリー人で1956年にアメリカに渡ってきた移民です。だから彼自身がアメリカ大統領選に立候補することはできませんが、ブッシュ大統領の対立候補であるケリー上院議員に金をばら撒いたりするなど、政治的な野心も十分あると考えられています。(※ アメリカには移民一世は大統領選に立候補できないという法律がある)
政治権力を唯一の牙城としている政治家たちにとっては苦々しい存在でしょうね。ただ、彼は慈善事業、東欧諸国の民主化にも一役買っています。哲学の造詣も深く、いずれにしろ一言では言い表すことのできない人物であることは確かです。
今回はそんなソロスの半生を寸劇を交えてお伝えいたします。どうぞお楽しみ下さい。
―ジョージ・ソロスの生涯―
1930年、ジョージ・ソロスはハンガリーのブダペストで生まれた。父は弁護士を勤めるユダヤ人。当時、産業の近代化が進むハンガリーでは、ユダヤ人は確固たる地位を築いていた。
しかし第二次世界大戦が勃発すると、枢軸国側のハンガリーはドイツの支配下に置かれた。ソロスは幼くして家族と共にドイツの監視から逃亡生活を送っていた。これは、そんなある日のことである。
↓ジョージ・ソロス
ん・・・?
はあ・・・はあ・・・はあ・・・、た、助けて・・・
どうした雑種? いや・・・貴様はユダヤ人か?
は、はいっ! ナチスに捕まりそうなんです。助けて下さい!
・・・・・・・・・。(そうかナチスがこの近くに来ているのか。そうなればユダヤ人である我が身も危ういかもしれんな。だがこの女は利用できるかもしれんぞ) よし、わかった。あの納屋の奥に隠れていろ。
は、はい。ありがとうございます…
それからしばらく後…
ハイルヒットラー! ねえ、お兄さんお兄さん。ここら辺にユダヤ人が逃げ込んでこなかったかしら?
ユダヤ人…? はて…
知っていたら教えてくれない? それとも知ってて惚けてるの? 教えてくれないと、私、酷いことしちゃうかもよ?
■●■■ーーーーーーッ!!!
・・・・・・そういえば、さっきあそこの納屋から音がしたな。ひょっとしたら隠れているのかもしれん。
本当? 嘘だったら許さないからね。
・
・
・
嘘っ?!! どうして見つかったの?!
■■▲■ーーーーーーーッ!!!!!
あ、本当に隠れていたわ! いいわ! やっちゃえ、バーサーカー!!
■■■■▲ーーーーーーーーーッ!!!!
きゃああああ!
ふふふ、お兄さんにはお礼言わなくちゃ。・・・・あれ、お兄さんがいない?
・
・
・
・
ふう…危ない所だった。あの女を囮にしておいて正解だったぞ。
こうしてジョージ・ソロスは生き延びることができた!!
・・・・・・・なあ、これって本当の話なのか?
少なくともソロス自身は講演で本当のことだと言っていますね。他にも彼は同胞であるユダヤ人から財産を没収する仕事をしたりしていました。もっともこの時期、ユダヤ人たちは誰もが自分の身を守ることで精一杯です。だから一概にソロスが悪いとは言い切れません。
自分が生き残るためだったら他人も裏切ることでもしろ――この考え方は、ソロスの父ティヴォドアから学んだと言われています。ティヴォドア自身、第一次世界大戦時、味方を裏切ってロシア側についたり、ロシアが不利になるとロシア軍の脱走するような人物でした。
そもそも自らの国を持たないユダヤ人にとっては、自分たちの住む場所ですら他人の国です。だから国のために命を捧げるなんて気持ちがあまり無いんです。しかし、こういった考え方は、国境の無い開かれた世界を求めるというソロスの基本的な思想になったと考えられます。(※ またソロスがロンドンに留学した際、「開かれた社会」の著者カール・ポパーに師事されたためとも言われる)
いずれにしろ、若いソロスは戦争やロンドンでの留学を通じてグローバル社会というものの重要性に目覚めたようです。そして彼はロンドンのシンガー&フリードランダー銀行に就職し、若手とレーダーとして活躍を始めます。
トレーダーとして第一歩を踏み出したわけだな。
ええ。でも、金融業の中でも特に保守的な傾向が強いロンドンの金融業に、ソロスはだんだん不満を抱いていくようになります…。
―1953年 ロンドン―
くそっ!我がこのような雑用など!我にはもっと才能があるのだ!
ソロス君。でも、君はまだ若いんだから…ちゃんと下積みを…
うるさい、この雑種が!我はこのようなチマチマした仕事は我慢できんのだ!
ふむ…威勢が良いのう。
・・・・・・・・・・・誰だ貴様は?
あ、あなたは?!
ワシはマイヤー証券の社長じゃ。どうじゃ?そんなにロンドンの仕事が合わなければ、アメリカに行ってみてはどうかの?
アメリカだと?
アメリカ……当時のアメリカは、第二次世界大戦で国内が戦場になることがなく、またヨーロッパに武器弾薬を売るために産業界の動員体制が成功を収め、急速な発展を続けていた。世界の富はアメリカに集中し、誰もが憧れる国へと変貌していたのだった。
アメリカ経済の中心、ウォール街
残念だが爺。俺はすでに1回、アメリカに移民申請して断られている。理由はアメリカで専門家としてやっていくには若すぎるということだ。
ほほほ。そんなことで断られたのか? 何ならワシが口利きしてやっても良いぞ。
何…?
ワシの知り合いにマーケット年鑑を書いておるフランツ・ピックという人物がおる。そいつに推薦状を書いて貰えば、お前さんは簡単にアメリカに移住できるじゃろう。
ほ、本当か?!
本当じゃよ。何なら今から奴に連絡してやっても良い。
す、凄いじゃない!ソロス君!君、アメリカに移住できるんだよ?!
ああ、爺。感謝するぞ。
何、礼には及ばんよ。なにせアメリカのトレーダーは、皆早死にするからのう。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・なあ、これも本当のことなのか?
ええ、笑ってしまうことに。若年だということで移住を断られたソロスに対して、『ブラックマーケット年鑑』の著者フランツ・ピックは、「トレーダーは若くなければならない。なぜならトレーダーは皆、早死にするからだ」という推薦状を書いたんですね。
実際、アメリカ経済の中心地ウォール街は、そのままウォール(破滅)だというBLACK JOKEもあります。それほどアメリカのトレーダーは仕事がきつく、自殺者が多い職種だったんです。
…作者が金融業に入りたがらないわけだ。
いくらお金が稼げても、自殺するようなストレスを溜める職場に居たくないというのが、作者の考え方ですからね。まあ作者のネタはこれぐらいにして、1956年にアメリカに移り住んだソロスは、メキメキと力を発揮して、様々な証券会社で能力を発揮します。そして1969年代に入るといよいよ自分の投資ファンドを設立します。
―1969年―
これからはヘッジファンドの時代だ。我は新しいファンドを設立するぞ。
しかし、本部は何処にするんですか? 今の法律ではウォール街で新規参入するのは難しいのでは?
カリブ海に浮かぶ島、キュラソー島だ。あそこならばアメリカの証券取引委員会に報告する義務も税金を払う必要もない。
↑キュラソー島の位置
(それって思いっきりブラックな取引をするということでは…?)
安心しろ。たとえ違法でも官憲の目を誤魔化せば問題はない。
・・・・・・・・・・・・・。
こうしてソロスは株の売買で大きな利益をあげました。この頃から彼のインサイダー疑惑(※株の違法な取引)はありましたが、そんなの一度お金持ちになっちゃえばこっちのもんです。ソロスは順調に稼ぎ続け、ファンドはどんどん拡大していきました。
堀江といい…、村上といい…、このソロスといい…、証券関係の奴らはロクな人間がいないな。
まあ、この業界では多かれ少なかれ闇の部分があるのは事実です。実際、ソロスは前回のポンド危機の後、アメリカ議会から査問会を受けますが、その時彼はこのように答えています。
もともと人間のつくったものに完全なものなどありません。
ルールや市場にも欠陥はあります。私はそれに従って利益をあげているのです。
これってルールに欠陥があるから悪いことしても稼いで良いって意味に聞こえるぞ?
あるいはルールに欠陥があるから早く直せという意味にも捉えられますけどね。ようするにソロスの考えというのは、我々常識人からかなりかけ離れた位置に存在するようです。我々日本人は「法やルールの中で」稼ぐことを当然と考えていますが、彼の場合は「法やルールの定めていない所」で稼ぐことが当たり前になっているんです。これを改革者と見るか、あるいは破綻者と見るかは人によって意見が異なると思いますが、作者はどちらかと言うと破綻者として見ています。
「開かれた社会は閉ざされた社会よりも優れたものである」(カール・ポパーの著作より抜粋)という考えはソロスの考えの根本になっています。しかしソロスはこのようにも述べています。
「開かれて拡大した社会や市場というのは、コントロールできないものである」
これはつまり、開かれすぎたグローバル社会というものが、時には国家やヘッジファンドでさえもコントロール出来ないものになるということをソロス本人も認めているわけです。作者としては「人の手に負えないものを、人が作り出してどうするつもりなんだろう?」という気持ちがあるわけです。
まあ、水力に始まり、火力、電力、原子力、民主主義…人の作り出したもので人が完全にコントロールできたものなんて皆無に近いのですけどね。この論議は誰とやっても延々と続くので、この辺で打ち止めとします。ただ、ソロスのこうした考え方は、いまだに賛否両論です。
では話をソロスの生涯に戻しますが、ソロスは1969年にイーグルファンド設立した後、今度は1973年にソロスファンドを設立します。この時、ソロスと組んだのが、かの有名なジム・ロジャーズです。
…ジム・ロジャーズって誰?
バイクや黄色いベンツに乗って世界一周する冒険家です。元々はソロスと同じ投資家で、最近では先物取引の講演などをしきりに行っています。まあ、見た目はただの太ったおじさんですけど。
↑ジム・ロジャーズ
・・・・・・・・・たしかに、そう感じるのは無理もないけど。
ただ、この「太ったおじさん」ことジム・ロジャーズとの出会いがソロスの運命を大きく変えます。行動派のジムと思考型のソロスは理想的な黄金チームだったんです。彼とソロスが組んでいた間、ファンドは損失を出した年は無く、成長率は3365%にまで達しました。これは驚異的な数字だと思います。
それって凄いことなのか?
ええ、凄いです。単純に考えて元手が33倍にまでなっているんですから。ソロスとジムのコンビが解消した後、資本金1200万ドルだったファンドは資本金2億8000万ドルにまで膨れ上がっていました。
…そりゃ凄いな。
では、今回の話はここまでに。次回はソロスとジム・ロジャーズがコンビを組んだ後のお話になる予定です。お楽しみに。
参考資料
ソロスの資本主義改革論 ジョージ・ソロス著 ジョージ・ソロス自伝 ジョージ・ソロス著 The Age of Fallibility: The Consequences of the War on Terror George Soros・著 The Winning Investment Habits of Warren Buffett And George Soros Mark Tier・著